コンピテンシー評価は、成果につながる行動の見える化だといえます。ハイパフォーマーのどのような行動を見習うべきかを評価基準とするため、明確でわかりやすく公平性や評価対象者の納得度が高いことも特徴です。本記事では、コンピテンシー評価のメリット・デメリットに加えて、導入プロセスと導入時のポイント・注意点などについてお伝えします。
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コンピテンシー評価とは
コンピテンシー評価とは、仕事で高いパフォーマンスを発揮し成果を上げている社員(ハイパフォーマー)の行動特性を評価基準とする人事評価の方法です。仕事で大きな成果を上げる社員には、学歴や資格、年齢などに関係なく共通する行動特性があるとされています。
その行動特性をヒアリングやアンケートなどの調査分析を経てモデル化し、評価対象者が量的・質的にどれだけ行動したかで評価する仕組みがコンピテンシー評価です。評価者の主観ではなく評価対象者の行動を見ることから、客観性や評価対象者の納得度の高さが特徴といえます。
「コンピテンシー」の意味
コンピテンシー(Competency)とは、英語で能力という意味です。コンピテンシー評価では、コンピテンシーとそのままカタカナで使われます。注目するのは、どのような行動が成果に結びついているのかという行動特性です。知識や経験、スキルなどをベースとして表れる行動から、仕事の能力を評価します。
人事評価制度における位置づけ
これまでの評価制度の移り変わりから、人事制度にはいくつかの種類があります。具体的には、能力評価(職能評価)や業績評価(目標管理制度)、多面評価(360度評価など)です。
能力評価(職能評価)では、従業員一人ひとりの職務遂行能力、つまり能力や知識、スキルを評価して処遇に反映させます。しかし、入社3年目と8年目など、能力を客観的にレベル分けする難しさがあり、年功序列(年次)の考え方を取り入れて機能する制度といっても過言ではありません。
同じ年次の従業員でも、成果には違いが生まれます。そこで注目されるようになったのが目標管理制度です。目標に対する達成度を評価する制度ですが、評価者と評価対象者が固定されてしまうため公平性や納得度の点で課題があります。
その点を補うのが、評価対象者を多面的に捉える360度評価や、能力でも業績でもなく行動特性で評価するコンピテンシー評価です。
▶ 関連記事:360度評価とは? メリット・デメリットや導入時のポイント、注意点を解説
▶ 関連記事:目標管理制度(MBO)とは? OKRとの違いや導入方法などを解説
コンピテンシー評価のメリット
ここでは、コンピテンシー評価のメリットを見ていきましょう。
人材育成の精度・効率向上
成果を上げる人材の行動特性がモデル化されていますので、どのような行動が成果につながり評価されるのかという明確な基準が存在します。人材育成では、具体的な行動がわかっていることから、精度や効率が向上する点は大きなメリットです。従業員も何をすればいいのかがわかるため、モチベーションも向上します。
評価に対する従業員の納得度アップ
評価に対する従業員の納得度も上がります。どのような行動が評価され、不足していたのかを具体的に知ることができるからです。フィードバックを元に、今後は何をどのように改善していくかを検討しやすく、評価者もアドバイスしやすいといえるでしょう。自分の成長が企業の成長につながっていることを実感しやすいというメリットもあります。
戦略人事の実現
戦略人事の実現にも、コンピテンシー評価は役立ちます。どのような行動特性を持つ人材が必要かをコンピテンシーに落とし込むことによって、求められる人材を組織全体に広めることが可能です。市場の変化に即した経営戦略の見直しや新たなビジョンを策定した際にも、戦略的に人材を育成・配置できます。
採用活動への活用
組織に必要な人材像がはっきりしていますので、コンピテンシーは採用活動にも活用可能です。隙のない履歴書や面接での印象に左右されすぎることが少なくなっていくでしょう。企業の求める人材像が明らかであれば、応募する側も応募先選定の判断がしやすくなり、企業と応募者とのミスマッチを防止します。
コンピテンシー評価のデメリット
多くのメリットがある一方で、コンピテンシー評価にはデメリットもあります。
導入にかかる工数・コストが大きい
これまで見てきたとおり、コンピテンシー評価はハイパフォーマーの行動をモデル化し、コンピテンシーという評価基準を設けるところから始まります。人材の選定や行動特性の調査分析、評価基準の設定、既存評価制度とのバランス調整、従業員への周知徹底など、導入にかかる工数やコストは大きいといえるでしょう。
継続的な評価基準の見直しが必要
求められる人材像は、常に一定ではありません。社会構造の変化や新しいビジネスモデルの出現、顧客の価値観の多様化などに応じて、市場で求められるものも変わります。ニーズが変われば、何が成果を生み出すかという要素も変わって当然です。成果を評価基準の根底に置いていることから、継続的な評価基準の見直しが欠かせません。
評価制度の柔軟性が低い
コンピテンシー評価の導入には、比較的長い準備期間が必要です。経営状況や市場、社会の変化に、柔軟かつスピーディに対応できないというデメリットもあります。求められるコンピテンシーが頻繁に変わるようでは、従業員も困惑するでしょう。柔軟性の低さを織り込んで制度を運用する必要があります。
コンピテンシー評価の導入方法
コンピテンシー評価の導入には、以下のようなプロセスがあります。まずは導入プロセスの全体像を把握しましょう。
導入プロセスの全体像
- ・対象の選定
- ・ハイパフォーマー分析
- ・評価項目の設定
- ・コンピテンシー評価シート作成
- ・実施および改善
最初に取り組むのは、評価基準となるハイパフォーマーの選定です。選定を終えたら、ハイパフォーマーが成果を上げている理由をヒアリングなどで丁寧に調査します。調査結果をもとに、どのような行動が成果につながっているかを分析しましょう。
分析結果と経営戦略を照らし合わせながら、評価項目を設定します。評価項目を反映したコンピテンシー評価シートを作成しましょう。ここからは、評価を実施し制度の見直しを繰り返すというPDCAサイクルに入ります。
導入時のポイント・注意点
- ・人選は組織体系に応じて行う
- ・分析しやすいよう詳細にヒアリングする
- ・コンピテンシーモデルを決める
- ・評価項目を具体化する
- ・コンピテンシーディクショナリーを参考にする
人選は、部署や職種、役職者やリーダーなど組織に応じて行います。現在活躍中の人材に加えて、今後伸びてきそうな人材を選んでもよいでしょう。複数人に目星をつけておくと偏りを防げます。
コンピテンシーモデルには実在する人をモデルとする「実在型」と、理想像を掲げる「理想型」、その中間の「ハイブリッド型」がありますので、自社に適したものを選んでください。
行動特性の分析には、行動の根拠となった詳しい事実が不可欠です。5W3Hを参考に、ヒアリングの際には、どのような場面でどのような課題をどのような方法で解決したか、その判断理由や得た結果などを詳しく聞き取りましょう。
評価項目は、思考力や行動力、コミュニケーション力などのように項目分けし、それぞれを具体化します。例えば、行動力ならスピードや正確さ、丁寧さなどがあります。コンピテンシーを体系的に説明するコンピテンシーディクショナリーを参考にしながら、それぞれの内容を決めていきましょう。
▶ 参考:「iコンピテンシディクショナリ(iCD)|独立行政法人 情報処理推進機構」
▶ 関連記事:人事評価制度の構築方法 必要な基準項目と評価手法を解説
▶ 関連記事:人事考課とは? 人事評価との違いや目的、評価軸、実施の流れを解説
まとめ
コンピテンシー評価とは、成果につながる行動特性を評価基準とする人事評価方法です。学歴や資格、在籍年数などに関係なく、行動が評価されるという明快さがあり、評価対象者にとっては公平性や納得度の高い制度だといえます。導入には工数の手間や相応のコストがかかりますが、多くのメリットもあります。現在の評価制度に課題を感じている企業は、検討してみてはいかがでしょうか。
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