社員一人ひとりの能力やスキルに着目し、パフォーマンスの最大化と成長を促進することで企業全体の業績向上を目指す人事戦略「タレントマネジメント」。90年代にアメリカで提唱されたこの概念と取り組みが、2010年代以降日本でも広がりを見せています。その背景を踏まえ、本記事ではタレントマネジメントの意味や定義から、アプローチ方法、目的、効果とメリット、導入する際の基本的なステップまでをトータルで紹介します。
タレントマネジメントの意味・定義
タレントマネジメントとは、企業が社員の才能や能力、スキルや経験などをデータ化して一元管理し、人事戦略に反映する取り組み全般を意味します。データは人材の採用、育成、配置、評価、定着と幅広く活用されますが、いずれも社員が持つ力を経営資源として捉えて最大限活かし、組織の成長を後押しするものといえるでしょう。
タレントマネジメントの概念は、1997年にマッキンゼー・アンド・カンパニーの報告書で提唱され、2001年に同社が刊行した「The War for
Talent」により大きく広がりました。タレントマネジメントの定義としては、次の2つが代表的です。
人材マネジメント協会「SHRM」による定義
「人材の採用、選抜、適材適所、リーダーの育成・開発、評価、報酬、後継者養成等の人材マネジメントのプロセス改善を通して、職場の生産性を改善し、必要なスキルを持つ人材の意欲を増進させ、現在と将来のビジネスニーズの違いを見極め、優秀人材の維持、能力開発を統合的、戦略的に進める取り組みやシステムデザインを導入すること」
人材開発センター「ATD」による定義
「仕事の目標達成に必要な人材の採用、人材開発、適材適所を実現し、仕事をスムーズに進めるため、職場風土(Culture)、仕事に対する真剣な取り組み(Engagement)、能力開発(Capability)、人材補強/支援部隊の強化(Capacity)の4つの視点から、実現しようとする短期的/長期的、ホリスティックな取り組みである」
タレントマネジメントの種類
企業におけるタレントマネジメントには、2種類のアプローチがあります。その違いは、タレントマネジメントを行う対象者です。
1つ目の「包括的アプローチ」では、新入社員から経営層まで全社員を対象とします。パート社員やアルバイト従業員を含めることもあります。適材適所の人材配置が可能となるとともに、組織力の強化やモチベーションの向上にもつながるでしょう。2つ目の「排他的アプローチ」では、特定の社員を対象とします。幹部候補やより専門的な能力やスキルのある人材に特化することで、迅速にさらなる成長を促すことができます。
どちらかがより優れた方法であるということではありません。企業が置かれている状況や経営課題に応じて、適切なアプローチを選択しましょう。
タレントマネジメントの目的、必要とされる背景
タレントマネジメントは人事戦略の一貫であり施策全般を意味するため、その目的も多岐にわたります。たとえば、次のような問題を解決することも目的といえるでしょう。
まず、大きな問題として挙げられるのは人手不足です。少子高齢化による労働人口の減少が今後も続いていくなかで、自社の人的資本を最大限活用できる環境を整えることは、企業にとって喫緊の課題です。また、市場の変化も大きな問題といえます。ビジネスのグローバル化や急速な市場変化に対応し競争力を高めていくためには、従来の画一的な人材マネジメントではなく、多様な人材が個々のパフォーマンスを発揮できるよう取り組まなくてはなりません。タレントマネジメントの導入は、これらの一助になると考えられます。
タレントマネジメントのメリットや効果
タレントマネジメントにより、企業が各社員の特性や状況、本人の希望を踏まえて人材育成やキャリア支援、目標設定、評価などを行えるようになるため、社員のモチベーションや働くことへの満足度、エンゲージメントの向上が期待できます。さらに、タレントマネジメントの適切な運用は人事施策全般の効率化に有効であることから、採用や育成にかかるコストを削減できる点もメリットといえるでしょう。
また、タレントマネジメントを行うことで、それぞれの社員のスキルや特性を活かした人材配置を実現できます。これにより、個々のパフォーマンスの最大化のみにとどまらず、組織全体の生産性や業務効率、品質の向上にもつながるでしょう。
タレントマネジメントの始め方、導入の流れ
タレントマネジメントを導入する際の基本的な進め方を紹介します。タレントマネジメントを始める手順や方法に厳密な決まりはありませんので、自社の状況や課題に合わせて設計しましょう。
導入目的の明確化・社内への周知
タレントマネジメントは人事戦略の一環です。企業が経営目標を達成するために、人事戦略を通じてどのような問題を解決し、何を実現したいかを明確化することで「何のためにタレントマネジメントを導入するのか」「どのような人材を求めるか」を導き出せるでしょう。目的に基づき、実施後の効果測定の指標も設定します。
なお、タレントマネジメントは組織横断的に実施されるため、人事部だけでなく社内全体への周知や連携依頼を行うことが重要です。事前に体制を整え、導入に臨みましょう。
タレントの定義・適材の発掘
目的や課題を踏まえ、求める人材像、つまりタレントを定義します。「この部署にはこのスキルを持った人材を何人配置したい」というように、可能な限り具体化しておくことをおすすめします。また、即戦力を期待するか、中長期的な育成を前提にしているかも明確にしましょう。
タレントが定義できたら、全社員のデータから要件を満たす人材を発掘します。効率的に発掘するためには、新しく精度の高いデータを整理された状態で見られるよう、常に整備しておくことが大切です。
人材の活用・配置の計画
データをもとにタレントが発掘できたら、目的達成のために最適なポジションへの人材配置を計画します。社員の適性を踏まえた人材配置が実現すると、社員にとっても組織や企業にとっても多くのメリットがあります。しかしながら、頻繁な異動や社員自身のキャリアプランを踏まえていない配置は、モチベーションの低下や離職のリスクにもつながりかねません。適切な内容とタイミングで実行しましょう。
人材育成と評価
新たな人材配置を実施した後には、各社員のパフォーマンスの変化を客観的に評価しましょう。そして、社員との面談を行い、現状の満足度や今後の希望などを確認します。必要に応じて研修を実施するなど、タレントマネジメントの目的に沿った人材育成につなげましょう。また、企業全体の業績や生産性にも着目し、総合的な評価を行います。
配置転換後には個々の社員の状況が変化するため、タレントマネジメントに用いるデータの更新が必要になります。新しい現場の管理職が社員の情報を把握したうえで、人事部と共有しましょう。
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タレントマネジメントの効果測定と継続サポート
あらかじめ設定した効果指標をもとに、効果測定と分析を行います。その結果、配置転換をした社員個人のパフォーマンスや、企業全体の業績に良い変化の見られない部分があった場合には、原因を特定し見直しを行います。社員が必要なスキルや知識を獲得する機会を提供したり、さらなる配置転換を検討したりすることで改善を目指しましょう。一定期間を置き、継続的に効果測定と調整を重ねることが大切です。
まとめ
市場の急速な変化や人材獲得競争の激化が続くなか、タレントマネジメントはこれまで以上に重要な取り組みになっていくといえるでしょう。タレントマネジメントには社員のパフォーマンス向上、組織の活性化、適切な人材開発を行えるなど数多くのメリットがあります。社員の能力や経験、ポテンシャルを最大限に発揮させるとともに、それぞれの働き方や価値観を生かすことで企業全体の競争力を強化し、継続的な業績向上を目指しましょう。
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