従業員のスキルや知識の向上、組織力の強化などを目指し研修を実施しても、受講者や経営層から「成果が分かりにくい」という声が挙がることは、実は少なくありません。受講者が成長感を得るとともに、研修施策を継続的にブラッシュアップし投資対効果を最大化するためには、研修効果の測定と可視化が大きなポイントとなります。本記事では、研修の効果測定の目的や効率的な実施方法、評価基準の考え方などを分かりやすくご紹介します。
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研修の効果測定を正しく行うべき理由
研修施策の投資対効果を測るため
研修の効果測定においては、定性的な評価・定量的な評価を総合的に行うことが重要です。特に投資対効果を測るには、実施後のアンケートによる受講者の満足度のような主観的な定性情報だけではなく、数値やデータを用いた客観的な定量情報の評価を提出できなくてはなりません。
企業は研修に多くのリソースを割いているため、成果を具体的に検証し、最大化を目指す必要があります。そのためには、あらかじめ目標値や評価の指標を明確に設定しておくことも大切です。
研修の実施方法や内容が目的に適しているか測り、改善サイクルを回すため
研修の効果測定は、評価を次回以降の研修施策に反映する改善サイクルを回すためにも欠かせません。測定結果の検証や、研修後の受講者に対する継続的な調査により、成果につながりやすいポイントや改善するべき課題を特定できます。
研修のカリキュラムやプログラム内容、講師や教材などさまざまな視点から分析を行い、改善策を講じ、次回以降の研修をブラッシュアップします。この繰り返しと積み重ねにより、研修効果の最大化を目指しましょう。
無駄を省き、効率化を行うため
研修の効果測定は、研修内容の無駄を省きプログラムの精度を高めるとともに、不要なコストを削減し施策全体を効率化するための鍵となります。適切な測定により効果の低い研修・高い研修を特定できれば、効果の高い研修にリソースを集中させることができます。
また「効果の高い研修」はなぜ効果が高いのか、どこがポイントになっているかなどを分析することにより、他のプログラムの向上や計画全体の見直しと改善にもつながります。
研修効果を測るための評価基準
カークパトリックの4段階評価法
カークパトリックの4段階評価法は、研修の効果を測定する上で信頼性の高い手法として多くの企業で採用されています。次の4つの観点から、受講者に対する研修の効果を客観的かつ包括的に把握できます。
(レベル1)反応/Reaction
アンケートやフィードバックにより受講者の感想や意見を収集し、受講者の満足度を評価します。研修内容への関心度や肯定感を把握できます。研修直後の実施がおすすめです。
(レベル2)学習/Learning
研修後のテストや実技評価などにより、受講者の知識や思考の理解度を評価します。研修が受講者の学習成果にどう影響したかを把握できます。
(レベル3)行動/Behavior
ヒアリングやアンケートを通じて、受講者が学んだ内容をどのように業務に活かしているかを評価します。研修が受講者の実務能力にどう寄与したかを把握できます。
(レベル4)結果/Result
業績指標などを用いて、研修の効果が目標に対してどう影響したか、企業への貢献度を評価します。研修の具体的な投資対効果を把握できます。
以上の4段階を通じて得られた結果は、研修内容の見直しや改善、効果の最大化へ向けた戦略的判断に役立ちます。
受講者に対する評価
研修効果を適切に評価するためには、あらかじめ受講者の知識やスキルを測定しておかなくてはなりません。研修実施の前後を比較することにより、研修の有用性や投資対効果を検証できます。
まずは受講者に対してテストや実技演習による事前評価を行い、理解度やスキルレベルを把握しましょう。そして研修後にも、その研修内容に即した評価を行うことで、受講者が新しく習得した知識やスキルの定量的な計測が可能になります。
研修後には、アンケート調査などを通じてフィードバックの収集も行いましょう。定性的な効果を把握でき、研修の改善にも役立ちます。さらに、研修効果の持続性や内容の定着度を測るには、研修後、一定の期間をおいてからのフォローアップ検査がおすすめです。
また、受講者のパフォーマンスを継続的に観察していくことも、研修が業務にどのように活かされているかを調べるために有効です。業務成績の分析や、受講者の上司や同僚からのフィードバックを通じて行うことができます。
経営数字に対する評価
経営数字に対する評価は、従業員への投資として実施された研修が、企業にとってどのような成果を上げ、いかに貢献したかを検証するために不可欠です。これは研修施策の見直しや継続に関わる重要な要素となります。
受講者の主観的な感想や研修施策の完成度だけではなく、受講者が研修を受けたことにより、経営数字に対してどういった成果を上げているかを評価基準として設定することで、経営数字に対する研修の効果を客観的に判断できるのです。
研修への投資効果は、研修を受講した従業員の営業成績や組織への貢献度を始め、売上やコスト、インシデントの増減、受講者のパフォーマンスの変容などから計測することができます。
研修が経営数字と直接関連付けて調査することの難しい内容であった場合には、人的資源管理に関する指標を用いて評価を行います。たとえば、コミュニケーション研修の効果を評価するためには、実施後の離職率や従業員のエンゲージメントの変化について調査することをおすすめします。
研修効果の計測方法 具体例
研修効果を適切に評価するためには、研修の目的や内容に応じた測定方法を選ぶ必要があります。具体的には、次のような方法が挙げられます。
【事後テスト・レポート】
受講者が研修で学んだ知識や思考を習得できているか、定量的に計測します。事前テストや過去に実施したテストと比較すると、より具体的な変化を把握できるでしょう。研修内容を理解していなければ正解できない設問を出題することが重要です。研修の内容や目的によってはレポートも有効です。
【受講者アンケート・インタビュー】
参加者の主観的な評価やフィードバックを得ることで、研修の満足度や感想、意見を収集できます。プログラム内容や講師の指導などについて、改善点を把握することができます。肯定的な意見ばかりを求めないよう工夫することも大切です。
【受講率・修了率調査】
研修の受講率を測定することで、研修への関心や重要性を把握できます。中長期にわたる研修の場合は、プログラムの進捗や修了率にも着目しましょう。
【研修前後の営業成績比較】
受講者やチームの業績の変化を測定することで、研修の投資対効果を把握できます。
複数の方法を組み合わせることにより、総合的な評価が可能になります。また、初回にフォーマットを作成し、次回以降も一貫した手順を踏むことで、中長期的な効果測定や過去との比較がしやすくなります。
まとめ
研修の効果測定は、研修の効果を測ること自体が目的ではありません。個々の受講者の成長や研修施策のクオリティの向上、経営戦略の改善を実現するために不可欠なプロセスとして位置付けることが重要です。
効果測定に取り組む際、まずは明確な評価基準とフォーマットを設定することをおすすめします。一貫性のある評価を継続的に行うことは、過去との比較や課題の抽出を容易にし、理想的な改善サイクルを導き出すことにつながります。また、効果測定にかかるコストの削減にも役立ちます。
日々の業務の中で、研修や効果測定はどうしても形式的なものになってしまいがちです。しかし、受講者の主観的な感想を収集することにとどまらず、経営数字への成果にも着目することが大切です。
定性的評価・定量的評価の両面から効果を測定し、課題の特定と対策の反映を繰り返し、個々の業務や研修内容の改善、経営戦略へと具体的に活かしていくことで、企業や個人の持続的な成長を促すことができるでしょう。
社内研修を効率的に行う方法
ひとことで研修といっても、情報漏洩リスクの回避や法令遵守を徹底させるためのコンプライアンス研修など実施が不可欠なものだけでなく、従業員のマインドセットや技能の向上を図るスキルアップ研修といった人材育成目的のものまで、その種類は多岐に渡ります。
どれも重要なものではありますが、研修担当者や受講者が研修に充てられる時間には限度がありますし、予算にも限りがあるため、1回1回の研修の精度を上げる必要があります。
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